あれは大学の帰り道、駅ビルのトイレに立ち寄ったときだった。
時間は夕方、ちょうど通勤ラッシュにかぶる前のタイミング。男子トイレは空いてたけど、個室を選んでドアを閉めた。
ふと、目に入ったのが床に落ちていた白い包み。
ナプキン。多分誰かが落としていったんだと思う。半分開いた状態で、ティッシュに軽く包まれてて、端が少しめくれてる。
めくれていた端から、中のパッドが見えた。
白いはずの表面が、うっすらと茶色がかってて、しかも……そこに、乾いたような、でもまだ粘度のありそうな“透明に近い白”がこびりついていた。
一瞬でわかった。
「……精液?」
まさか、と思った。でも、その形状と色、少し黄ばみかかった痕跡は、見覚えがありすぎた。
しかも――鼻を近づけた瞬間、確信した。
女の匂いと、男の匂いが混ざってる。鉄っぽい、生臭さ。ナプキン独特の湿ったにおい。そこに、ほんのり漂うザーメンの匂い。
「……誰か、ここで抜いたのか……?」
それとも、セックスした直後に女が使ったのか。
どっちにしろ、その妄想が一気に膨らんだ。
(誰の……どんな子の……?)
(もしかして、すごく地味で大人しそうな子が、こっそりオナニーして、パンティー越しに擦って、そのままナプキンに……)
(いや、彼氏と駅のトイレでやった直後に、精液が漏れたまま貼り直した?)
脳がぐるぐる回って、下半身が反応してるのに気づいた。
「……やば……」
気づけばズボンの前を下ろして、自分を握ってた。匂いはリアルすぎた。精液だけじゃない、生理と愛液と汗と、男の体液と女の残り香が混ざった、異常なほどエロい臭気。
ナプキンを拾って、鼻先に近づける。ティッシュ越しじゃない、直の香り。
「うっ……」
一発で背筋がゾクゾクした。
(誰か知らない女の、膣から出た液体と、そこに流し込まれた精子……)
そう思った瞬間、腰が勝手に動いた。
「ん……っ、はっ、やば……」
個室の中で、小さく息を殺しながら、腰を突き上げるように扱き続ける。手が濡れて、ヌルヌルになって、パンツの中が熱を帯びてくる。
「中……に出されたまま……これ、貼ったのか……」
頭の中が壊れそうになる。どんな体位で、どんな声を出して、誰に挿れられて、どれくらい感じたあとに、このナプキンが貼られたのか――。
その“余韻の匂い”を嗅ぎながら、俺は限界まで扱いて――
「っ……あっ……くっ……!」
腹のあたりに、白いものが飛び散った。静かなトイレの中で、自分の吐息がやけに大きく響いてた。
しばらく、動けなかった。
手を拭いて、ナプキンはティッシュに包んで、ゴミ箱に捨てた。
でも――正直なところ、もっと嗅いでいたかった。
あの匂い、今でもたまに思い出す。
あのときの、“リアルすぎる”残り香に、俺は完全にやられてしまったんだと思う。