「……マジか」
窓の外は土砂降りだった。
思いつきでひとり旅に出て、小さな民泊を予約したのが昨日。チェックインして30分、近くの温泉に行くつもりで支度してたのに、外はバケツをひっくり返したみたいな大雨。
「温泉、今日はやめといた方がいいかもしれませんね」
声をかけてきたのは、この民泊の管理人の男性。50歳手前くらい。無口で、でもなんとなく丁寧で、距離の取り方がちょうどよくて、最初から悪い印象はなかった。
「そうですよね……こんなに降るとは」
「もしよかったら、管理室の方でテレビでも見ていきます? お部屋のテレビ、映り悪いので」
ちょっと迷ったけど、ひとりで部屋にこもってるよりマシだと思って、うなずいた。
管理室は、古いけど清潔だった。
畳の上に電気ストーブがあって、お茶の湯気がほわっと立っている。
「ここ、昔は旅館だったんですよ。今はもう、予約も少なくてね」
彼はそう言いながら、私の湯飲みにお茶を注いでくれた。
気を遣わない会話が、逆に心地よかった。
そして、何より――
この空間、妙に湿度が高くて、静かで、誰にも邪魔されない空気があった。
「……一人旅、お好きなんですか?」
「たまに。何も考えないでいたい時とか」
「わかります。ここ、音がないのがいいでしょう」
たしかに。雨音だけが響いていた。
しばらくして、ストーブにあたっていた私の脚が、少しだけ管理人の脚と触れた。
ほんの一瞬。でも、彼がそれを離さなかったのを、私は感じた。
(……あれ?)
思わず彼を見ると、目が合った。
「……ごめんなさい」
「いえ、俺のほうこそ……」
そのまま、言葉が止まった。
沈黙のまま、私が立ち上がろうとしたとき、彼の手がそっと私の膝に触れた。
「……ここにいても、いいですか」
私がそう言うと、彼は一瞬だけためらって、そっと私の手を取った。
唇が重なる。
若い男のキスとは違って、呼吸の間合いも、舌の動かし方もゆっくりだった。
私は、自然に浴衣の紐を解かれた。
「冷えますよ」
そう言って、肩から浴衣を脱がせたあと、彼は静かに私の胸に口づけた。
唇が乳首を捉え、舌がそこを何度も優しく転がす。
「あ……っ」
息が漏れる。
手は下腹へ向かい、ショーツの中に指がすべり込む。
「こんなに、濡れて……」
「だって……こんな空間で……っ」
膣の入り口をなぞる指。
ゆっくり一本、挿し込まれた瞬間、腰が浮いた。
「んっ……指、太い……でも、や……」
「気持ちいいですか」
「うん……っ」
そのまま彼は指で膣を優しくこすりながら、舌で乳首を吸い上げた。
ビクビクと痙攣しながら、私は一度目の絶頂を迎えた。
数分後、私は彼の膝に跨っていた。
挿入される瞬間、熱さと、濃密な感触に喉が鳴った。
「っ……あ……入ってる……すごい……」
「動いても、大丈夫?」
「うん……いっぱい……突いて……っ」
畳の上、湿った空気の中で、体を打ち付ける音だけが響いた。
私は、彼の腰の上で何度もイきながら、いつのまにか、頬を涙がつたっていた。
朝、雨は止んでいた。
私はいつもよりゆっくりと支度をして、駅までの送迎を頼んだ。
「……昨日のこと、誰にも言いませんから」
助手席でそう言うと、彼は静かにうなずいた。
そして、バックミラー越しに小さく微笑んだ。