雨音が静かに屋根を叩く夜。ふと手にした旅館のパンフレットが、あの夜のことを思い出させた。
私は37歳、子どもも独立し始めた頃で、夫との関係はどこかぎこちなかった。そんな折、職場の慰安旅行で訪れたのが、山あいのひなびた温泉宿だった。
部屋割りはくじ引き。偶然にも、年下の同僚・直也と二人きりの部屋になった。
「奥さん、気まずくないっすか?」彼の冗談めいた言葉に、私も笑って返した。どこかで安心したのかもしれない。久しぶりに、誰かに女性として見られているような気がした。
夕食後、皆が宴会に興じる中、私は一人で露天風呂に向かった。蒸気に包まれた夜の湯は、どこか夢のようだった。
「先輩……ですよね?」
湯気の向こうに現れたのは、バスタオル一枚の直也だった。
「バカね……」そう言いながらも、私は彼の視線から目を逸らせなかった。
彼が近づくたび、湯の温度よりも熱い何かがこみ上げてきた。
頬に触れた指先。唇が触れた瞬間、私は抗うことができなかった。
旅館の浴衣を脱ぎ捨て、彼の手が私の肌をなぞるたび、女としての感覚が目を覚ましていく。
胸元を吸われるたびに「あっ……だめ……」と声が漏れる。
足を割られ、湯船の縁に腰をかけた瞬間、彼の熱が入り込んできた。
「んっ……あぁっ……!」
水音と喘ぎが重なり、理性はとっくに溶けていた。
「中に……出して……いいの?」 「だめ……でも……もう……っ」
彼の一突きごとに、身体が跳ね、湯の表面がはねる。
絶頂の波が押し寄せると同時に、私は彼の名を何度も呼んでいた。
終わったあと、彼の胸に顔をうずめながら、「帰りたくない」と呟いた自分に驚いた。