「……ねぇ、今日は……来てくれるよね……?」
私はまた、誰もいない部屋でそう呟いた。
薄暗い部屋、カーテンの隙間から漏れる街灯の光だけが、床に線を描いていた。
手元には、いつものバイブ。
お気に入りの──私の“彼氏”。
名前なんてつけてないけど、私はこのバイブに、いつも“彼の声”を重ねていた。
好きな人もいた。付き合った人もいた。
でも、こんなふうに優しく抱いてくれる人なんて、現れなかった。
だから私は、作った。
“頭の中の彼氏”を。
ベッドに横たわって、ゆっくりと服を脱ぐ。
今日は、上下黒の下着。レースが細かくて、透けてて、彼が好きだって言ってたやつ──
もちろん、全部私の妄想。
「かわいいよ」って、彼は私の胸を撫でてくれる。
その手を感じながら、自分で乳首を摘んで──
「あっ……」って、喘ぎ声が漏れた。
まだ挿れてもいないのに、私の下着はぐっしょり濡れていた。
バイブのスイッチを入れると、低い音と振動が空気を震わせた。
「今日も……私のこと、抱いてくれるの……?」
ゆっくりと、バイブを膣口にあてる。
触れただけで、身体がビクッと跳ねた。
何度も繰り返してるのに、慣れるどころか、どんどん反応しやすくなってる。
「あっ、やぁ……だめ、ゆっくり……して……」
自分で言いながら、自分で押し込んでいく。
膣の奥がギュッと締まって、振動がじんわり伝わってくる。
「奥、あたってる……」
涙が滲む。
切なくて、寂しくて、でも……気持ちよくて。
彼の声が聞こえる気がした。
「大丈夫、気持ちよくなっていいんだよ」
「誰も見てないよ。俺だけが見てる」
「好きだよ……お前の、全部」
「うん……すき……っ、わたしも……すき……っ」
腰が勝手に動いて、バイブが奥を擦って、
「やっ……あっ……イッちゃう……っ!」
声が止められなかった。
1回目の絶頂は、浅かった。
けど、そのまま抜かずに──
「もう一回……お願い、もっと、して……」
スイッチを強にして、ピストンさせながら、もう片方の手で乳首を転がす。
ビリビリした。
お腹の奥が、痺れたみたいに熱くなる。
妄想の彼が、私を見下ろしてる。
「そんな顔、俺にしか見せちゃダメだよ」
「イって、もっとイって……壊れていいから」
「うあっ……あああっ!! すごいっ……もぉ、無理っ、止まんないっ……!」
腰が跳ねて、何度も絶頂して、
膣からバイブを抜いた時──
とろりと、白濁した液がシーツに落ちた。
「ありがとう……今日も、来てくれて……」
息を整えながら、私は濡れたおもちゃを撫でて呟いた。
現実にはいない“彼”。
でも私は、愛されてた。
毎晩、こうして。
「ねぇ、また……明日も、来てくれるよね……?」
返事はない。
けど、私は笑ってた。
快楽に壊れながらも、
今夜だけは、ひとりじゃなかったから。