彼女と知り合ったのは、近所の公園だった。お互い、子供を連れて遊びに来ていて、自然と話すようになった。
「…うちの子、すごく人見知りで…」
「うちもそうですよ。でも、二人で遊んでるの、見てると可愛いですよね」
そんな他愛のない話をするうちに、私たちは、仲良くなった。お互いの家を行き来するようになり、子供たちは、大の仲良しになった。
彼女の名前は、アヤ。俺より2歳年下で、優しくて、いつも笑顔を絶やさない、素敵な主婦だった。でも、俺は、知っていた。彼女の笑顔の奥に、どこか寂しさが隠されていることを。
ある日の夜、子供たちが寝た後、俺は、妻と喧嘩をした。言い争いになって、俺は、家を飛び出した。向かったのは、いつもの公園。ベンチに座って、一人でタバコを吸っていると、後ろから、声が聞こえた。
「…どうしたの?」
振り向くと、そこに立っていたのは、アヤだった。彼女は、パジャマの上に、コートを羽織って、俺の横に座った。
「…妻と、喧嘩しちゃって」
俺が、そう言うと、彼女は、何も言わずに、俺の手に、そっと、自分の手を重ねてきた。彼女の手は、少し冷たかった。でも、その冷たさが、俺の心を、なぜか落ち着かせてくれた。
「…大丈夫。いつか、分かり合える日が来るよ」
彼女の優しい言葉と、手の温かさに、俺は、思わず泣きそうになった。その時、俺は、「この人は、俺の寂しさを、分かってくれる」と確信した。
そして、俺は、彼女を抱きしめた。彼女も、俺のことを、強く抱きしめ返してくれた。公園のベンチで、俺たちの、誰にも言えない「秘密」が始まった。
それから、俺たちは、こっそりと会うようになった。
子供たちが、それぞれの家で寝静まった後、俺たちは、近くのホテルで会った。ホテルの部屋に入るたびに、俺は、罪悪感と、そして、どうしようもない快感に、襲われた。
「…ねぇ、このこと、誰にも言わないでね」
彼女が、そう言って、俺の胸に顔を埋めた。彼女の言葉が、俺を、この関係から抜け出せなくさせた。
初めてのセックスは、お互い、戸惑いながらだった。でも、彼女の肌は、とても柔らかくて、温かくて、俺は、どんどん彼女にのめり込んでいった。
「…んっ、あぁ…!」
彼女の甘い声が聞こえるたびに、俺は、「俺は、彼女の知らない部分を、独り占めしているんだ」という、背徳感に満たされた。
彼女は、俺のペニスを、優しく、でも確実に、快感の淵へと連れていってくれた。俺は、彼女の胸に顔を埋めて、彼女の匂いを深く吸い込んだ。その匂いは、どこか、俺の妻の匂いと似ていて、俺の罪悪感を、さらに掻き立てた。
俺たちは、お互いに、愛しているとは言わなかった。それは、お互いの家庭を守るための、暗黙のルールだった。
「…子供、可愛いね」
公園で、子供たちを遊ばせながら、俺は、彼女にそう言った。彼女は、優しい笑顔で、頷いた。
その笑顔を見るたびに、俺は、彼女との夜の顔を思い出して、胸が締めつけられる。俺たちは、昼は「近所の仲の良い友達」。夜は、「身体の関係を持つ共犯者」。この二つの顔を持つ自分たちに、俺は、どうしようもない違和感を感じていた。
でも、この関係を、やめることができなかった。この関係があるから、俺は、妻との関係がうまくいかなくても、なんとかやっていけている。この関係があるから、俺は、毎日を、なんとか生きられている。
ある日の夜、彼女とホテルで会った時、彼女は、俺に言った。
「…ねぇ、たまに、思うの。もし、私たちが、もっと早く出会っていたらって…」
彼女の言葉に、俺は、何も答えられなかった。もし、俺たちが、独身で出会っていたら…そんなことを考えると、胸が締めつけられる。
俺たちは、これからも、この関係を続けていくのだろう。
公園で、子供たちを遊ばせながら、笑顔で話す昼の顔。夜、こっそりとホテルで会う、背徳感に満ちた夜の顔。この二つの顔を使い分けながら、俺たちは、生きていく。
「…ねぇ、また、会える?」
彼女が、そう言って、俺の手に、そっと、自分の手を重ねてきた。俺は、何も言わずに、彼女の手を握り返した。
それは、愛ではなかった。それは、お互いの孤独と欲望を満たすための、ただの「共犯関係」。
俺たちは、この関係を、やめることができない。なぜなら、この関係が、俺たちにとって、日常という名の牢獄から、ほんの少しだけ抜け出せる、唯一の方法だったから。