……結局、今夜も帰る場所はここしかない。
駅前のネットカフェ、鍵付き個室の302号室。タバコのヤニと芳香剤が混ざったような、あの独特の澱んだ空気。 スマホの画面に通知が飛ぶ。掲示板でやり取りしていた「客」からの、合流の合図。
「……いま、下に着いたよ。黒の軽」
私は手早く、小さな鏡で口紅を塗り直した。 少し剥げかけたネイルを隠すように、バッグを握りしめる。 ネカフェの狭いブースを出て、深夜の冷たい空気の中、駅の裏手にある暗い駐車場へ向かう。
「……こんばんは。よろしくお願いします」
助手席のドアを開けると、生ぬるいエアコンの風と一緒に、芳香剤のきつい匂いと、男の体臭が混ざった生活臭が鼻をつく。 相手は、どこにでもいそうな作業着姿の中年男性。 彼は挨拶もそこそこに、ダッシュボードから一万円札を二枚、無造作に差し出してきた。
「……時間、ないから。すぐ始めていい?」
私は無言で頷いて、狭い助手席でスカートを捲り上げた。 シートベルトが背中に当たって痛い。 でも、そんなことより、早く終わらせてネカフェの温かいシャワーを浴びたい、それだけだった。
「……あ、っ、……」
彼の手が、私のストッキングを強引に引き下ろす。 狭い車内で、彼の膝がシフトレバーに当たって、ガタガタと音が鳴る。 指が、まだ冷え切っている私の割れ目に、一気に二本突き立てられた。
「くちゅ、じゅるっ……」
静まり返った深夜の駐車場。 遮音性の低い軽自動車の中で、粘膜が擦れる水っぽい音だけがやけに大きく響く。 外を誰かが通り過ぎるかもしれないっていう緊張感で、喉の奥がカラカラに乾いていく。
彼は自分のズボンを下ろすと、パンパンに張り詰めたそれを、私の奥の方までゆっくりと沈めてきた。 「ぐちゅ、ぱちゃっ……!」 愛液と空気が混ざり、シートの合皮が擦れる音と一緒に、卑猥な摩擦音が止まらなくなる。 一突きごとに、車体が小さく揺れて、サスペンションが軋む音がした。
「っ、あ、……っ、いい、……っ!」
快感なんて、もう半分も感じていない。 ただ、中をかき回される熱さと、彼の荒い鼻息が顔にかかる不快感。 それでも、私の体は勝手に反応して、ぐちょぐちょに濡れた結合部から、白い泡が吹いて、彼の作業着のズボンにポタポタと滴り落ちた。
「……出す、出すぞ……っ!」
彼は私の腰を強く掴んで、狭い助手席に私を押し付けたまま、奥の奥まで何度も何度も叩き込んだ。 ドクドクと脈打つ振動と一緒に、熱い精液が大量に注ぎ込まれるのがわかる。 生温かくて、少し青臭い精液の匂いが、狭い車内に充満していく。 繋がったまま彼が腰を浮かせると、私の中から、俺の精液と私の液が混ざり合って、ドロリと溢れ出した。
……終わった後の、あの急激な静寂。
彼は手早くティッシュで自分を拭き、私にも数枚手渡した。 「……ありがと。気をつけて帰りなよ」 何事もなかったかのように、彼はエンジンをかけて、夜の街へ消えていった。
私は一人、駐車場に残されて、股の間から垂れてくる彼の精液をティッシュで拭き取った。 指に絡みつく、白くて不透明な液。 それをゴミ箱に捨てて、乱れた服を直す。
ネカフェに戻って、狭いシャワー室で自分の股を洗うとき、石鹸の匂いに混じって、まだあの精液の生臭い匂いが鼻をかすめる。 鏡に映った自分の顔は、ひどく疲れていて、でもどこか他人事みたいに見えた。
明日もまた、この狭い個室でスマホを見ながら、次の「客」を待つんだろう。 下着の中に残る、拭いきれなかった微かな湿り気と、精液の匂い。 それが、今の私の、たった一つの生きている証拠だった。
これが、私がネカフェと車内を往復しながら繰り返している、誰にも言えない売り行の記録。