「なんか、変だ――」
一人暮らしのアパート。二階の小さな部屋で、いつものようにベッドに座ってスマホをいじっていた。
窓は閉めているのに、夜風がどこかから入り込んでくる気がする。カーテンの隙間が、何度もひらひらと揺れて、私は無意識に何度も後ろを振り返った。
金曜日の夜。友達は飲み会、私は予定がない。
下着だけの姿で、だらしなくソファに寝転がる。シャワーも浴びて、今日は誰にも会わないから、ゆるいTシャツ一枚。
テレビをつけたままウトウトしていたとき――
ふいに、耳元で「スーッ」と空気が抜ける音がした。
何もないはずの部屋。
でも、どこか“誰かがいる”気配。
ぞくり、と背中に寒気が走った。
「……やだ、考えすぎ」
自分で自分に言い聞かせる。
でも、動悸が止まらない。
ベッドに入り、布団を頭まで被った。
なのに、シーツの上を何かが這うような感覚がした。
――気のせい、だよね?
呼吸が浅くなる。
右足のつま先から、ゆっくりと冷たい感触が上ってきた。
布団の中に、風なんて入り込むわけないのに。
そのまま、右足首を何かに掴まれる。
「……っ!」
思わず足を引っ込めるけど、まるで無重力の空間で引っ張られるみたいに、
体がベッドに押し付けられる。
「や、やめて……誰……?」
返事はない。
でも、確かに“何か”がいる。
Tシャツの裾が、ひらりと持ち上げられた。
自分でやっているはずがないのに、下腹部がどんどんあらわになっていく。
「いや、だめ、やめて……」
パニックのはずなのに、どこかで“期待”している自分がいる。
パンツのゴムが、自然に伸びて、すうっと足元まで下ろされる。
布団の中は、蒸し暑いのに、肌に触れる空気だけが妙に冷たい。
両脚が、ゆっくりと開かされる。
自分で動かしていないのに、太ももが勝手に開いていく。
「……やだ、誰か、助けて……」
涙が出そうになるのに、
同時に、下半身がじんじんと熱くなっていく。
太ももの内側に、何か湿ったものが這い寄ってくる。
見えない舌? それとも指?
何も見えないのに、粘っこい唾液の感触が、皮膚を這う。
「はっ……や、だめ……っ」
指でつままれる感覚。クリトリスを、まるで熟練の指先みたいに刺激される。
空中で何も見えないのに、快楽だけがリアルに押し寄せる。
息が荒くなる。
布団の中が、どんどん蒸れて、体が汗でべたべたになる。
「や……あっ、そこ、だめ……!」
見えない手が、膣の入口をなぞる。
何も入っていないはずなのに、
“透明な指”が、ゆっくりと私の中に差し込まれていく。
異物感と快感が、同時に膨れ上がる。
「っ、あ……ああ……っ」
膣の中を掻き回される。
透明な手が奥に届いて、
まるで見えない人が、私の上に重なっているみたい。
両手首をシーツの上に押さえつけられる。
全身が、目に見えない力に支配されていく。
腰を持ち上げられて、
透明なものが、私の膣にゆっくりと、だけど確実に、ねじ込まれていく。
「や……やだ、抜いて、お願い……」
抵抗の声が、喉で詰まる。
――でも、体は、どんどん敏感になっていく。
腰を何度も打ちつけられて、
膣の奥が、ぐちゃぐちゃにかき回される。
見えないものが、私の中に入って、
出口まで届いて――
 
快感が、一気に弾けた。
「っ……ああっ、や、だめぇ……!」
体がビクビクと跳ねて、全身が痙攣する。
膣の奥に、熱いものが流れ込んできた感触。
でも、精液なんて見えない。
濡れた証拠も、どこにも残らない。
息ができないほどの絶頂感。
見えない誰かに貫かれて、
私は完全に、堕ちていった。
気がつくと、朝になっていた。
太ももには、薄い赤い痕。
首筋には、微かなキスマーク。
私は何も見えない天井を、じっと見つめていた。
「……夢、だったのかな」
でも、下着は床に脱ぎ捨てられていて、
シーツはぐちゃぐちゃ。
下半身は、うっすらと濡れている。
誰にも言えない。
言っても、信じてくれるはずがない。
だけど、
体は、昨夜の快感を、
忘れていなかった――。

