「ごめん、今日は……無理だよ」
私がそう言うのは、月に一度の恒例みたいになっている。
ベッドの中、パジャマ姿で横になっていると、
彼が後ろからそっと腕を回してきた。
「大丈夫だよ」
彼は小さな声で囁く。
それだけで、いつもの夜よりずっと心臓がドキドキする。
生理2日目。
下腹が重くて、さっきから鈍い痛みが続いている。
普段なら「今日はやめとこ?」って、すぐに甘えてしまうのに――
今夜だけは、なぜか、断りきれない気がした。
「……ほんとに、平気?」
私がそう聞くと、
彼は優しくうなずいて、髪を撫でてくれた。
パジャマの裾から手がすべり込んできて、
お腹を温めるみたいに、ゆっくりと撫で回す。
「血、ついちゃうよ?」
「そんなの気にしない」
 
彼の声が、いつもより近くて、少し熱っぽい。
私は目を閉じて、
シーツの上に寝転がった。
パンツのゴムを指でなぞられると、
生理用のナプキンがあたるカサカサした感触が伝わる。
「恥ずかしいよ……」
自分の体が“生理中の女”だってこと、
いつも以上に意識させられる。
それでも彼は、
「大丈夫、全部、好きだよ」って、
何度も囁きながら、
私のパジャマとパンツをゆっくりと脱がしていった。
ナプキンを外す瞬間、
私は顔を真っ赤にして、思わずシーツに顔をうずめた。
彼は指で優しく膣の入口をなぞる。
普段より、ぬるぬるしている。
血の匂い、鉄みたいな、生々しいにおい。
「いや、やっぱり無理かも……」
声が震える。
だけど彼は、
「全部、愛してるから」って、
私の腰を包み込むように抱きしめてくれる。
彼の舌が、膣の周りをやさしく舐めてくる。
血の味がするはずなのに、
まったく気にしていないみたい。
私は、涙が出そうになるくらい恥ずかしくて、
でもそのぶん、身体の奥まで愛されている気がした。
「入れても……いい?」
彼の声に、私は首を小さく縦に振った。
彼のものが、ぬるぬるの膣にゆっくりと入ってくる。
血と愛液が混ざり合って、普段よりも熱くて柔らかい。
「大丈夫……?」
「うん、気持ちいいよ……」
腰を打ちつけるたびに、
彼の腹に血が跳ねて、
シーツに赤い染みが広がっていく。
恥ずかしいはずなのに、
「全部受け止めてくれるんだ」って、
頭の中が真っ白になる。
彼は私の名前を何度も呼びながら、
「好きだよ、好きだよ」って、
何度も何度も奥まで突いてくる。
私は両手で彼の背中を掴んで、
涙が出るほど強くしがみついた。
「もう、だめ……イきそう……」
下腹の重さと、快感が、
ごちゃごちゃになって、一気に溢れ出す。
「……っ、ああ……っ!」
身体が震えて、
奥のほうで何かがほどけるように、絶頂が走った。
彼はそのまま、私の中に全部出してくれた。
シーツが赤く染まって、
二人の体が汗と血でぐちゃぐちゃになっても、
彼はずっと私を抱きしめてくれていた。
「ありがとう、大好きだよ」
彼の胸に顔をうずめると、
心臓の鼓動が、自分のものと重なった。
こんなに恥ずかしいこと、
もう二度とできないかもしれない。
でも今夜だけは、
「全部、許されている」気がした。
朝になって、
シーツを見たとき、ちょっと笑っちゃった。
「また洗濯しなきゃね」
彼と見つめ合って、
二人だけの秘密みたいに、微笑み合った。
――今日は無理だよ、なんて。
本当は、
彼になら、いつでも全部、受け止めてほしい。

