夜の街の冷たさ、私の居場所

日が暮れて、街にネオンが灯り始める頃、私はいつもの場所に立つ。人通りの多い道の、少しだけ影になった場所。ここで、私は夜を過ごす。通り過ぎる人たちは、私を見て、顔を逸らしたり、好奇の目を向けたりする。ほとんどの人は、私がここにいる理由なんて知らない。知ろうともしない。

冷たい風が、薄着の体に染みる。足元から、じんわりと冷たさが上がってくるのが分かる。もう何時間も、ここで立ち続けてる。足はパンパンに腫れて、ブーツの中の指先は、感覚がない。

「また、今夜もか…」

心の中でそう呟く。ここに来るしか、私には生きる道がない。そう思ったら、胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように痛む。

一台の車が、私の目の前でゆっくりと止まった。窓が開いて、中から男の顔が見える。目が合った瞬間、男の視線が、私の体を上から下まで、品定めするかのように這う。その視線に、ゾワッと鳥肌が立つ。でも、ここで引いたら、今日の稼ぎはゼロになる。

「ねぇ、いくら?」

男が、低い声でそう言った。私は、いつものように、できるだけ無表情に、値段を提示する。そこから、短い「交渉」が始まる。男の口から出る言葉は、いつも同じ。「もっと安く」「あれも、これも」…まるで私が、ただのモノであるかのように。

時には、車から降りて、私の体を触ってくる男もいる。腕を掴まれたり、腰を撫でられたり。そのたびに、吐き気がする。でも、私は笑って、体を突き放さない。それが、この仕事の「ルール」だから。

「じゃあ、これでいいよ」

男が、うんざりしたようにそう言って、車から降りてくる。彼の顔を見る。無表情で、何も考えていないような目。その目に、私自身が映っているようだった。

男の車に乗り込んで、ホテルの駐車場に着く。慣れた手つきで、部屋に入る。部屋の中は、いつも同じ、どこかカビ臭くて、使い古されたシーツの匂いがする。

男は、すぐに服を脱ぎ始めた。私も、黙ってそれに従う。下着を脱いで、冷たい空気に肌が触れるたびに、また、あの夜の冷たさが全身に染み渡るような気がした。

ベッドに横たわると、男が私の体の上に覆いかぶさってくる。彼の重み、彼の肌の感触…その全てが、私にとって、もう何の感情も伴わない「作業」になっていた。キスをされる。舌が絡み合う。それは、私が「望む」キスじゃない。ただ、彼の要求に応えるだけの行為。

「気持ちいいか?」

男が、私の胸を揉みしだきながら、そう聞いてくる。私は、何も感じないのに、ただ頷く。私の体は、もう、感情を伴わない「快感」しか受け付けなくなっていたのかもしれない。

彼が、私のおまんこに指を入れてくる。濡れていないのに、無理やり広げられるような感触。痛いはずなのに、もう痛みも感じない。そして、彼が私の中に入ってくる。

「んっ…」

声が出たのは、痛みからじゃなくて、ただ、体が「ああ、また始まった」と反応しているだけだった。腰が動くたびに、「ドクドク」と体の奥が脈打つ。それは、確かに「快感」と呼べるものだったかもしれない。でも、それは、心が伴わない、無機質な、ただの肉体的な反応だった。

男が腰を激しく動かすたびに、私の体は、乾いたスポンジが水を吸い込むように、彼の欲望を吸収していく。顔は無表情のまま、心はどこか遠い場所にある。

そして、男が私の中で、精液を放出した時、私は、ただ「ああ、終わった」と思うだけだった。快感の余韻も、温かい感情も、何も残らない。

部屋を出て、男と別れる。手渡された札束の重みだけが、唯一の「現実」だった。夜空には、もう白い光が混じり始めてる。もうすぐ、朝だ。

また、同じ場所に立つ。私の体は、男の精液で少しだけ湿っていて、冷たい風が、それを乾かしていく。足は、またパンパンに腫れてる。

この街に立つ限り、私は、この生活から抜け出すことはできない。私の体は、ただ消費されるだけの「モノ」。でも、それが、私にとって、唯一の生きる道なんだ。この夜の闇と、私を蝕む「無機質な快感」が、私の全てだった。