何度中に出されても、私は妊娠できない。だからもう、あたしの中は空っぽなんだと思ってる。

シャワーの音だけが、響いてた。

膝を抱えて、浴室の隅に座り込んで、
あたしはまた、泣いてた。
泣く理由なんて、本当はわかってる。
さっき、また──中に出されたから。

ホテルのベッドで、
見ず知らずの男の人に、「中でいいよね?」って言われて、
頷いてしまった。
そして、また……終わったあとも何も言われず、
彼はシャワーも浴びずに先に部屋を出ていった。

「ありがとう」も「またね」もなくて、
代わりに残ったのは、
膣の奥に広がった、生温かい感触と、
あたしの中に“何もない”っていう感覚だった。

……これで、何回目だろう。
生で挿れられて、中に出されて、
「妊娠するかもね」って言われたのに、
一度も、何も、できたことない。

避妊してない。わざと。
むしろ、中に出されることで、
“女としての価値”を感じたくて──
でも、できなかった。

生理が来るたび、ほっとする反面、
「またダメだった」って、
どこかで自分を否定してる。

検査には行ってない。
行くのが怖い。
「子供、できにくい体ですね」って言われたら、
本当に終わってしまいそうで。

でも……心のどこかで、もう知ってる気がする。
あたしの中には、
何を出されても、宿るものなんて、きっとない。

それでも──

中に出された瞬間だけは、
“必要とされた”気がした。
“抱かれた”気がした。

そうやって、自分をごまかして、
快感で涙を誤魔化して、
また、知らない人とセックスしてる。

「もしかして、今日こそ……」
って、期待しながらも、
終わったあとは、いつも、シャワーで流してしまう。

でも流せないのは、
身体の奥に残った、
“何も宿らない”っていう感覚だった。

あたし、
“中出しされた”っていう事実に、
すがってるだけなのかもしれない。

……本当は、子供、欲しかったんだと思う。
でも、もう口にできない。
誰にも、言えない。

──次の約束もしてないまま、
今夜もまた、アプリを開く。

「生でいいですか?」
「うん」って、きっとまた、言ってしまう。

空っぽなのは、
身体じゃなくて、心のほうかもしれない。