駅の多目的トイレ、指先に残る自分の匂い

……本当は、ただ用を足しに寄っただけだった。

新宿駅の、いつも混んでいる多目的トイレ。重たい扉が閉まって、カチッと鍵をかけた瞬間、外の喧騒が急に遠くなる。あの独特の、芳香剤と少しのアンモニアが混ざったような、冷たい空気。

便座に座って、下着を下ろしたとき、ふっと自分の股の間から、蒸れたような、甘酸っぱい匂いが立ち上った。その瞬間、頭の奥がじわじわと痺れて、手が勝手に動いた。

「……っ、……」

中指を、そっと自分の割れ目に滑り込ませる。 まだ何もしてないのに、指先がヌルッとした粘り気のある液に触れた。ストッキングやタイツの中で、一日中閉じ込められていた場所が、驚くほど熱を持ってる。

一番敏感なところに指を立てて、小さく円を描く。 「じゅちゅ、……っ、……」 静かな個室に、自分の粘膜が擦れる、水っぽい音だけが響く。 誰かに聞かれるかもしれないっていう緊張感で、心臓がバクバクいって、喉の奥がカラカラに乾いていく。

指を第二関節まで、ゆっくりと中に沈めてみた。 「くちゅり」 奥の柔らかい壁が、指に吸い付くように締まる。 朝から溜まってた欲求が、指を動かすたびに、ドロドロとした愛液になって溢れ出してきた。指の根元までびしょびしょになって、手の甲にまで温かい液が垂れてくる。

「あ、……っ、……」

声を殺して、でも指の動きはどんどん速くなる。 二本差し込んで、中をかき回すと、 「ぐちょ、じゅるっ、……」 空気が混じって、卑猥な音が止まらなくなる。 自分の指が、自分の内側をズリズリと擦り上げる感触。 自分の体液で、指先がふやけていくような、あの独特の生ぬるい感覚。

絶頂が近くなると、腰が勝手に浮いて、便座に当たる音がカタカタと鳴る。 「……っ、ふ、……ああ、……っ!」 頭の芯が真っ白になって、全身がガクガクと震えた。 中が指を強く締め付けて、熱い液がドクドクと指の間から漏れ出すのがわかる。

……終わった後の、あの急激な冷め方。

指を引き抜くと、白く濁った糸を引いた愛液が、ポタポタと床に垂れた。 指先はふやけて、自分の濃い匂いがこびりついてる。 備え付けの硬いトイレットペーパーで、指と股をゴシゴシと拭き取る。 指の股に残ったヌルヌルがなかなか取れなくて、何度も何度も拭いた。

鏡のない個室で、乱れた下着を直して、何事もなかったかのように外に出る。 自動ドアが開いて、また駅の雑踏に戻る。

でも、歩くたびに、さっきまで指を入れていた場所がじわじわと火照って、拭ききれなかった液が下着に染みていく。 手を洗っても、指先にまだ自分のあの生臭い匂いが残っているような気がして、つい鼻を近づけてしまう。

これが、私の誰にも言えない、日常の中のほんの一瞬の告白。