50代で熟女だけど久々にセックスしたくなって

……こんなに、自分の体がうるさいなんて思わなかった。

ホテルの狭いエレベーターの中で、隣に立つ彼――アプリで一度だけやり取りした、私より十も年下の男――の肩がふれるたび、二の腕の産毛が逆立つのがわかる。最後に誰かと肌を重ねたのは、もう何年前だろう。夫とは、もう十年近く「無味無臭」の同居人だ。

部屋に入って、カードキーを差し込んだ瞬間に鳴る、無機質な電子音。それが合図みたいに、彼の手が私の腰に回された。

「……緊張してる?」

耳元で囁かれた声が、低くて、少しだけ笑っている。悔しいけれど、その振動だけで下腹部がキュッとして、奥の方がじわりと熱を帯びるのがわかった。長い間、ただの「排泄」や「周期」のために機能していた場所が、急に、自分とは無関係な生き物みたいに脈打ち始める。

ブラウスのボタンを外される指先を、ぼんやりと見つめていた。私の指より少し太くて、節くれだった男の手。それが、丁寧に、でも拒絶を許さない力強さで、私の古びた日常を剥ぎ取っていく。

鏡に映った自分の体は、思っていたよりずっと「肉」だった。 少し緩んだ脇腹、重力に逆らえなくなった胸。恥ずかしくて目を逸らそうとしたけれど、彼の熱い手のひらが、その「緩み」を愛おしそうに、執拗になぞってくる。

「綺麗ですよ」

嘘だってわかってる。でも、その言葉が私の理性を、最後の一枚まで溶かしてしまった。

ベッドに押し倒された時、背中に触れたシーツのひんやりした感触が、逆に肌の火照りを際立たせる。足を開かされ、彼の顔がそこへ近づいた瞬間、私は自分の口から漏れた、聞いたこともないような低い鳴き声に驚いた。

……ひどい匂いがする。

男の体臭と、石鹸と、そして、私の中から溢れ出した、鉄分を含んだような生臭い、でも甘い匂い。長い間、閉じ込めていた「女」の残骸が、堰を切ったように流れ出していく。

彼の指が、まだ硬いままの粘膜を割り入る。

「くちゅり」

静まり返った部屋に、その音が響いた。 恥ずかしくて、顔を覆おうとした手を掴まれ、頭の上で固定される。 指が動くたび、粘り気を帯びた音が大きくなる。ぐちょぐちょに濡れて、指を受け入れるたびに空気を噛んで、情けない音が鳴る。

「……あ、やだ、そんな音……」 「聞こえてますよ。直子さんが、こんなに欲しがってる音」

意地悪な言葉が、絶頂よりも先に脳を痺れさせる。 五十年生きてきて、自分を「ただの肉塊」だと感じたのは初めてだった。 母親でもなく、妻でもなく、名前さえもどうでもいい。ただ、この熱い塊を中に入れて、かき回してほしいという飢えだけが、全身の毛細血管を支配していく。

彼が私を跨ぎ、その「硬いもの」をゆっくりと沈めてきた時、私はあまりの熱さにのけぞった。 久々すぎて、受け入れられるか不安だったのに、体は驚くほど素直に、泥濘のように彼を飲み込んでいく。

内側の壁が、彼の形を必死に覚えようとして、小刻みに痙攣している。 一突きごとに、脳の芯が白く塗りつぶされる。 腰を打ち付けるたびに、結合部から「ぴちゃ、ぴちゃ」と、水気の多い、重たい摩擦音が溢れた。 もう、言葉なんて探せない。

「ああ、……っ、あ、……!」

喉の奥が震えて、声にならない。ただの呼吸が、熱い塊となって彼に吐きかけられる。 彼の首筋に回した腕に、自分の爪が食い込むのを感じた。 痛みさえも、自分が生きている証拠みたいで心地よかった。

絶頂の瞬間、私は彼の肩を強く噛んだ。 口の中に広がる、少ししょっぱい汗の味。 頭の中が弾けて、全身の神経が一本の糸に繋がって、強く引き絞られたような感覚。 指先から足の先まで、自分の意志とは無関係にピクピクと波打つ。

……すべてが終わった後の、あの冷え切った空気。

エアコンの音が、急に大きく聞こえる。 シーツに広がった、大きな濡れた跡。 彼は優しく頭を撫でてくれたけれど、私はもう、彼を「異物」として感じ始めていた。 自分の体に付着した、他人の体液。その生温かさが、急に重たく、不快に感じられる。

でも、シャワーを浴びるために立ち上がった時、膝が笑って、うまく力が入らなかった。 鏡に映る私の顔は、さっきまでの私じゃない。 唇は腫れ、目は潤み、頬は赤らんでいる。 その「汚れた」姿が、不思議と、ここ数年で一番、生きてるって実感を伴って見えた。

駅までの帰り道、夜風が火照った肌に冷たい。 明日からはまた、無味無臭の日常に戻るだろう。 でも、下着の中に残る、あの「重たい湿り気」と、微かな痛みが、私がまだ「女」として壊れることができるのだと、静かに教えてくれていた。