「…カズキ…」
俺は、彼の遺影の前で、ただ、その名前を呼ぶことしかできなかった。俺の親友、カズキは、突然の事故で、俺たちの前からいなくなってしまった。
彼の妻、ユイは、ただ、泣いていた。その泣き顔を見るたびに、俺の胸は、締め付けられるように痛んだ。俺は、彼女に、何もしてあげられない自分が、情けなかった。
それから、俺は、毎日、ユイの家を訪れるようになった。カズキの部屋は、そのままにされていた。彼の匂いが残る部屋で、俺たちは、二人で、カズキの思い出を語り合った。
「…ねぇ、カズキ、こんなに早く死ぬなんて、思ってなかったよ」
彼女が、そう言って、泣き崩れた時、俺は、何も言わずに、彼女を抱きしめた。彼女の震える体、温かい体温…それは、俺の心を、なぜか、ざわつかせた。
ある日の夜、ユイは、俺に言った。
「…ねぇ、カズキの匂い…嗅いでいかない?」
彼女の言葉に、俺は、少し戸惑った。でも、俺は、彼女の言葉に甘えるように、彼女の部屋に入った。
彼女は、カズキの服を、俺の顔に押し付けた。カズキの匂い…それは、俺にとって、懐かしくて、でも、切なくて、胸が苦しくなる匂いだった。
「…カズキ…」
彼女が、そう言って、俺の背中に、そっと、手を回してきた。俺は、彼女の温かさに、抗えなかった。
俺は、彼女の唇に、キスをした。そのキスは、カズキへの裏切りだった。でも、俺は、その裏切りに、どうしようもない快感を覚えていた。
彼女の服を脱がせ、俺の体を、彼女の体に重ねる。彼女の肌は、カズキを知っている。その事実が、俺の罪悪感を、さらに掻き立てた。
「…っ、あぁ…っ!」
彼女の甘い声が聞こえるたびに、俺は、カズキの顔を、頭の中から消し去ろうとした。
俺は、彼女の中に、ペニスを挿入した。それは、カズキの存在を汚す、タブーな行為だった。でも、俺は、そのタブーに、どうしようもない興奮を感じていた。
俺の腰が動くたびに、彼女の体が、激しく揺れる。パンパンと、肌がぶつかり合う音が、部屋中に響く。それは、喪失の痛みと、禁断の快感が、一つになる音だった。
愛なのか、それとも…
セックスが終わった後、俺は、彼女を強く抱きしめた。彼女の温かい胸に、顔を埋めて、彼女の匂いを深く吸い込んだ。
「…ごめん、カズキ…」
俺は、そう呟いた。彼女は、何も言わずに、俺の背中を、優しく撫でてくれた。
俺たちは、この関係を、愛だとは思っていなかった。それは、お互いの喪失感を埋めるための、ただの「共犯関係」。
でも、この関係があるから、俺は、カズキを失った悲しみから、ほんの少しだけ、救われているのかもしれない。この関係があるから、俺は、毎日を、なんとか生きられている。
「…ねぇ、また、会える?」
彼女が、そう言って、俺の手に、そっと、自分の手を重ねてきた。俺は、何も言わずに、彼女の手を握り返した。
それは、愛ではなかった。それは、「共犯」という名の、二人だけのタブーなセックス。そして、そのタブーなセックスが、俺たちにとって、喪失の淵から、ほんの少しだけ抜け出せる、唯一の方法だった。