「……なあ、それ、今日履いてたやつ?」
仕事帰りの電車を降りて、駅前の駐車場で車に乗り込んだ直後だった。
助手席に座った私の膝の上には、折りたたんだ洗濯物の袋。実家から持ってきた私物を、たまたま彼に頼んで車で送ってもらっただけのはずだった。
だけど、彼の視線がその袋の中に落ちてることに、私はすぐに気づいた。
「……やめてよ」
そう言った声が、思ってたよりも掠れていた。
言葉とは裏腹に、私の指先は袋の端をぎゅっと握ったまま動けなかった。
恥ずかしい。でも、どこかで……「バレたかった」のかもしれない。
ビニールの音が、いやに大きく響く車内。
彼の手が、袋の中から白いレースのショーツを一枚取り出した。
「やっぱり、これ。あのときの匂いと、同じだ」
その言葉に、背筋がゾクッとした。
ふいに、下腹部の奥がきゅうっと締まる。息が浅くなっていく。
彼は迷いなく、鼻先にパンティーを押し当てた。
「……っ、や、やめ……」
言えなかった。いや、言う気がなかった。
胸の奥で、何かが壊れていく音がした。
彼の呼吸音が荒くなるたびに、自分の身体の奥も同じように震えていく。
「……濡れてる」
彼がそう言ったとき、私の喉がカラカラに乾いていた。
下着じゃない。私自身が、今……濡れている。
「舐めたい」
その言葉に、私は頷いてしまっていた。理性はとっくに役に立たなくなっていた。
彼の舌が、パンティー越しに這う。乾いていたはずの布が、じっとりと湿っていく。
私は脚を閉じた。いや、閉じきれなかった。
内腿がじんわりと熱くて、我慢できなかった。
スカートの奥で、自分の指が動いていた。
「だめ……っ、見ないで……っ」
でも、彼は見ていた。嬉しそうに。愛しそうに。
私の全部が、丸裸にされていた。
でも、それが……幸せだった。
やっと、私を“変態”として見てくれる人に出会えた。
隠してきたものを、許してくれる人に。
車の窓ガラスが白く曇る。
パンティーを咥えたままの彼と、指で達した私のあいだに、もう秘密なんてひとつもなかった。
「また、履いてきて」
彼のその言葉が、ずっと耳の奥で響いていた。