「送ってくれるだけでいいよ」って言ったのに、彼は部屋まで上がってきた。
理由は簡単。雨が強くて、玄関先で濡れたまま立っているのも変だったから。
でも、それだけじゃない。わかってた。わたしも、彼も。
だってこの人は、親友の彼氏。
本当なら、二人きりになんてなっちゃいけない。
わかってるのに、ドアを閉めた瞬間から、空気が変わった。
「タオル貸して?」
渡したタオルで髪を拭く彼を見てると、胸の奥がざわざわしてきた。
好きじゃない。好きじゃないのに、目が離せない。
濡れたシャツ越しに透ける肌、肩幅、指の節の動き……全部が危ない。
「コーヒー淹れるね」と背を向けたとき、後ろから腕が回ってきた。
「……やめよ」って声にしたのに、心臓が跳ねた音のほうが大きかった。
背中越しに感じる体温に、膝が緩む。
「一回だけ」
その言葉が、どうしようもなく甘く響いた。
本当は拒めたはず。でも振り返った瞬間、唇が塞がれて、全身が電気みたいに熱くなった。
キスが深くなるたびに、罪悪感は遠くへ押しやられていく。
胸を触られて、「ん……」と漏れた自分の声が、止めを刺した。
もう止まらない。止められない。
服を脱がされるとき、最後の抵抗みたいに「友達に……」って呟いた。
でも彼は「言わないよ」とだけ。
その一言で、わたしの中の何かが崩れた。
ベッドに押し倒されて、脚を開かされて、触れられるたびに腰が浮く。
「だめ……だめなのに……」って頭の中で繰り返しても、身体は素直に濡れていた。
指が入ってきた瞬間、「あっ……」と声が漏れた。
友達の顔が一瞬浮かんだのに、次の瞬間には快感に飲み込まれて消えた。
奥を探られるたびに、背中が反って、シーツを握りしめる。
彼が中に入ってきたとき、全部が背徳の匂いで満たされた。
「あ……入って……」と自分で言ってしまった声が、耳の奥で響く。
罪悪感は、熱に溶けて形を失っていった。
何度も奥を突かれるたびに、理性が剥がれ落ちていく。
「もっと……」ってせがむ声は、もう私じゃないみたいだった。
イく瞬間、頭の中は真っ白で、友達のことなんて一欠片も思い出せなかった。
終わったあと、静かな部屋で、彼は何も言わなかった。
わたしも、何も言えなかった。
ただ、背徳の余韻だけが、身体に残ってた。
その夜、鏡の前で、自分の首筋に残った赤い跡を見つめた。
「もう二度としない」って思ったのに、指でなぞったら、また濡れてしまった。