性教育で知った『入れる』という行為

保健の教科書を見ると、あの頃のことが全部「図解」されてて、なんだか笑っちゃう。でも、私が小五の時に自分の部屋でやってたことは、あんな綺麗な矢印じゃ説明できない。

あの日は、夏休みが始まる直前の、すごく暑い午後だった。 学校から帰って、ランドセルを放り投げて。家には誰もいなくて、セミの声だけがうるさく聞こえてた。

なんとなく、股の間がムズムズして、自分でもよくわからないけど、ズボンの中に手を入れてみたんだ。そしたら、そこは汗とは違う、もっとぬるぬるしたもので濡れてた。

「え、病気かな?」

ちょっと怖かったけど、指をその「割れ目」にそっと押し込んでみた。 指がすーって中に入っていった時、心臓がドクンって跳ねた。 中はお風呂のお湯よりもずっと熱くて、指を動かすと、お口の中みたいに柔らかくて、ぬめぬめしてた。

「……あ」

指を奥まで入れると、なんだかおしっこしたくなるような、でももっと気持ちいいような、変な感じがして。 教科書には「ちつ」って書いてあるけど、あの時の私は、そこを「自分の体の中にある、ひみつの入り口」だと思ってた。

指をまわすと、クチュ、クチュ……って、小さな音がする。 その音が恥ずかしくて、でももっと聞きたくて。 指を出してみると、指先にはキラキラした、水あめみたいなのがついてて、ちょっとだけ酸っぱいような、お日様に当たった草みたいな匂いがした。

私はその指を鼻にくっつけて、何度も深呼吸した。 これが「私」の匂いなんだって思ったら、なんだか自分が、昨日までの自分とは違う、もっと大人に近い「何か」になっちゃった気がして。

あの時、カーテンから漏れる光の中で、じっと自分の指を見つめてた私。 今の私なら、あれが「自慰」だって知ってるけど。 あの頃の私にとっては、それは「自分という魔法」を、指先で見つけるための、大事な実験だったんだと思う。