「……今日も気持ちよかったよ、ありがとう」
そう言って微笑む姿は、どこにでもいる、少し痩せた、物静かなおじいちゃん。
でも私は、その人に、シャンプー中に勃起させてしまったことがある。
それ以来、私たちは洗髪室のシャワー音に紛れて、誰にも言えないことをしている。
介護士として老人ホームで働いてもう5年。
体位交換、排泄介助、入浴、洗髪。最初はすべてが仕事で、何の感情もなかった。
けれど、その日――
髪を洗っていた相手は、70代後半の男性、Kさん。無口で穏やかで、若い頃は教員をしていたという。
お湯の温度を確認しながら、後頭部からゆっくり流していく。
私はいつも通り、首筋から耳の後ろ、額へと指をすべらせた。
「痛くないですか?」
「うん、優しい手だね」
そのとき、ふと視線が下に落ちて、彼の腰のあたりがわずかにテント状に膨らんでいるのに気づいた。
まさか、と思った。でも、何度目かの洗髪のあとも、同じように張っていた。
ある日、思い切って尋ねた。
「……もしかして、気持ちよくなっちゃいます?」
彼は一瞬だけ目をそらして、照れたように笑った。
「ごめんね……君の指があまりに丁寧で、つい……」
その表情が、なんだか妙に可愛くて、私は笑ってしまった。
「私、下の洗い残しも気になるタイプなんですけど……洗いましょうか?」
冗談めかして言ったつもりだった。
でも彼は、ゆっくりと、頷いた。
ビニール手袋をはめて、股間を洗う。
本当は、男性職員に交代すべき。でも、なぜか彼は私の前に座っていた。
手袋越しに、そっと包む。
「……硬いですね」
「……ごめん、歳なのに……でも……」
膨らんだそれを、石鹸でなぞる。
ぬるぬると泡立った先端が、ピクッと跳ねた。
「ダメだったら言ってくださいね」
「……ダメじゃないよ。むしろ……ありがとう」
その一言に、膣の奥がじわっと熱くなるのを感じてしまった。
私は手袋を外して、素手でそれを握った。
細くて、でもしっかりと勃起していて、触れるたびに震えていた。
「……出したら、スッキリしますか?」
「君の手で、してくれるのかい?」
私はそのまま、腰を浮かせた彼の下半身に口を近づけた。
濡れた石鹸の香りと、わずかに残る老人の体臭。
それなのに――それが妙に、興奮した。
舌で先端をなぞると、Kさんは喉を鳴らして、椅子の背に頭を預けた。
「……あっ……そんな、うまく吸われたら……」
数分後、口内に温かい精液が広がった。
ゆっくりと吐き出して、お湯で流して、何もなかった顔をした。
それから、洗髪室は“ふたりの秘密の場所”になった。
週に一度、私はKさんの髪を洗いながら、彼の身体の一部もゆっくりと撫でる。
ときには指で膣を濡らし、自分の下着を脱いで、彼のものを自らに挿れることもある。
「……動かなくてもいいです。私が、勝手に動きますから」
そう言って、シャワー音に紛れて腰を上下させる。
ゆっくり、じっくり、泡だらけの中で。
ぬるぬると音を立てながら、イくまで腰を打ちつけた。
私は介護士で、彼は利用者。
やってはいけない。わかってる。
でも、ここでは**「やってはいけないこと」が、一番気持ちいい**。
今日もまた、洗髪の準備をするたびに、心臓が静かに高鳴る。