さみしくて、濡れすぎて、こわれた夜

 またひとり、夜になった。
 この部屋には私しかいない。昨日も、今日も、たぶん明日も。

 エアコンの音がうるさくて、でもそれが唯一、人の気配を想像させてくれる気がして、切れない。
 リモコンを握ったまま、私は膝を抱えて座っていた。Tシャツ一枚。下は、穿いてない。
 ふとももの内側がまだ少し湿っていて、ソファの布が冷たかった。

「……またやっちゃった」

 今日はやらないって決めてたのに。けど、なんでだろ。
 “寂しい”って感情が、胸の奥でカタカタ揺れると、それだけで……手が勝手に下に伸びてる。

 スマホの履歴、消したはずなのに、また同じ動画を開いてた。
 男の声じゃなくて、女の子の“喘ぎ方”だけで濡れる。
 この子、本当に感じてるのかな。嘘でもいいけど、嘘じゃなかったら、もっと濡れる。

 Tシャツの中、乳首が擦れて痛い。痛いのに、そこにしか意識がいかない。
 指で少し押すと、腰がピクリって跳ねた。

 なんで私、こんなになっちゃったんだろ。

 元カレと別れてから、誰ともまともにエッチしてない。
 セフレっぽい人はいた。でも、私の身体を“使う”だけで、心がそこになくて。
 終わったあと、部屋の空気が死んでるのがわかって、シャワー浴びながら泣いた。
 声出して泣いてるのに、指だけはまたクリに触れてて……そんな自分が、すごく気持ち悪かった。

 でも、気持ちよかった。
 どっちかが嘘なら、どっちかが本当なら、私は何に救われるのかな。

 また、指を入れた。
 中があったかくて、ぬるぬるで、自分の中なのに「誰の穴?」って思うくらい、知らない感覚。
 第二関節まで入ったあたりで、膣の内側がきゅって吸い付いて、私はそこで声が漏れた。

「あっ……んっ、また……おかしく、なりそう……」

 右手の中指が、私の膣の中で“動きたい”って言ってるみたいに疼いてた。
 左手は乳首。爪の先で転がすように弄って、身体の中の熱が跳ねるのを感じる。
 お腹の奥が重くて、足がびくびく震えて、冷たいソファの布地がじっとり濡れてた。

 私、やばい。やばいのに、止められない。

「っ……ああっ、……もっと、もっと……っ、ひとりなの、やだ……っ」

 気づいたら、泣いてた。
 目からじゃなくて、声に涙の匂いが混ざってる感じ。
 誰にも求められてないのに、自分で自分を壊すみたいに擦って、突いて、奥に届かせて。
 そのたびに、「誰かに抱かれてる」って錯覚が、じわって浮かんで、また消えてく。

 イったのは、何回目だったかわからない。
 最後は、身体ごと跳ねて、背中がソファから浮いて、全身がつーんって痺れた。
 放心したまま、両足を開いたまま、天井を見てた。

 部屋の匂いが変わってる。
 私の匂い。湿った、えっちなにおい。好き。嫌い。でも、また嗅ぎたくなる。
 クッションに顔をうずめて、私は少し笑った。

「……だめだなぁ、ほんとに」

 けど、これが今の私。
 寂しくて、濡れすぎて、でも、誰にも触れてもらえなくて。
 自分で壊して、自分で慰めて、でもまだ足りなくて。

 ねえ、こんな私でも──

 誰か、「さみしくないよ」って言ってくれたら、
 きっと、こんなに濡れずに済むのかな。